介護を仕事にするということ

十数年介護を仕事にしてきて日々思う事

介護を始めた頃の話

私が現場に出た時には、介護保険が始まってまだ2年しかたってない頃で、措置時代の名残を残した光景をたくさん見てきました。

介護の専門学校を卒業していますので、実習等で教科書と現場の違いは理解しており、現場に出た時も「こんなもんかな」と深く考えることもなく、流れに乗った介護をしてきました。

 

今思い返せば「介護」ではなく「作業」だったと思います。

 

その作業を毎日何も考えずに繰り返すのです。特に苦しいことはありませんでした。

仕事ですから。

それどころか、初めの職場には同じ年代の職員が数多く在籍しており、毎日楽しく仕事が出来ていました。

 

そこに利用者はいませんでした。

 

いや、実際にはいましたよ。老健で80名くらいの方が入所されていました。

でもあまり覚えてないんです。当時は、いかに仕事を早く効率的に済ませるのかが職員の優劣の判断基準でした。利用者は作業の対象にしか過ぎませんでした。

ちょっと大げさな表現ではありますが、世の中それが当たり前だった頃があったんです。

 

そんな中、私事で職場を変えることになり、実家近くのかなり田舎の特養へ転職します。

そこではさらに、措置時代かと思うような光景が広がっていました。食事、入浴、排泄の作業をただ繰り返すだけ、拘束も簡単に行われていました。食事、入浴、排泄の業務以外は無駄扱いされ、いかに段取りよく作業をこなせるかが物をいう世界でした。

もちろん実際にはレクリエーションや行事も行われており、楽しんでいる利用者もありましたが、職員は「やらなければいけないからやる」といった形でした。

私も仕事だから特に何も考えずにこなします。どうやら適応能力はあるようで、胃潰瘍になりながらも、順調に立ち位置を確保していきました。

 

そんなこんなで、教科書で習ったことなんか理想でしかなく、役に立つのは介護技術だけという状況でも、何も感じなかったのは、それが介護だと思っていたからだと思います。

 

「そんな時代だった」というか、私がまだ介護が分かってなかった頃の話です。