介護を仕事にするということ

十数年介護を仕事にしてきて日々思う事

不適切なケア

先日、虐待対策委員会に途中から出席すると、席に着くなり介護職員からこんな質問がありました。

「トイレで利用者様に着替えて頂くのは虐待ですか?」

なんのこっちゃと思いましたが、

どうやら、不適切なケアについての話題で盛り上がっていたみたいです。

 

「虐待対策委員会」名前は違えど、どの施設にも設置してある委員会かと思います。

 

幸いにも私の施設では虐待は行われておりません。

虐待が行われていないので、虐待対策委員会の主な活動は虐待の予防という事になります。

虐待の予防といえば、接遇の見直しや不適切なケアの洗い出しがメインではないかと思います。

私の施設でも、その流れにのって虐待対策委員会は接遇や不適切なケアについて話をしています。

まだ始めたばかりなので、各部署からの意見聴取をしている段階ですが、その場での質問でした。

 

「トイレで利用者様に着替えて頂くのは虐待ですか?」この質問をしたのは、ベテランバリバリの介護職員です。

 

残念な気持ちでした。ちょっと当たりはキツイけど、仕事は出来るしハキハキしてるし、「リーダーとかやってくれたらいいな」くらい思っていた人なだけに。

 

トイレで利用者に着替えてもらうことが良いか悪いかの判断が出来ないんですよ。

 

施設職員のダメなところは閉鎖された空間で介護していることだと思います。

感覚がマヒするんですよね。何が正解か分からなくなってしまう。

そして、その施設で行われていることが正解だと思ってしまう。

 

誰しも考えることが嫌いなのも分かります。流れに乗って作業をこなす方が楽です。

でも、それではいつまでたっても介護は専門家になれません。

一人ひとりが考えて行動できることが求められています。

 

話がそれました。

不適切なケアに戻りまして。

不適切なケアってなんでしょう。適切ではないケアですね。

適切ではないケアということは、利用者様に合ってないということですね。

利用者様に合ってないという事は、それは行ってはいけないことです。

 

では、どんなことが不適切なケアでしょうか。

先ほどのトイレで利用者様を着替える行為は不適切なケアでしょうか。

 

それは利用者様が決めることですね。

 

どんなケアをするのにも、そのケアをする理由があるんです。根拠が必要なんです。

その利用者様をトイレで着替える根拠があるのであれば、それは適切なケアになります。

介護は、科学的根拠に基づいた実践です。その根拠を見失えば、単なるお世話です。

 

なので「トイレで利用者様に着替えて頂くことは虐待ですか?」の私の答えは

「その利用者様にトイレで着替えなければならない根拠があるのであれば、虐待ではない」です。

「職員都合なら虐待か」と言われれば、虐待とまではいかなくても不適切なケアであることは間違いないです。利用者様の感じ方によっては精神的虐待に当たるかもしれません。

 

一通り説明をすると、質問をしてきた職員は「わかりました」とだまってましたが、たぶん何もわかってないでしょうね。

他の委員もそのやり取りを見てましたが、説明を頷いて聞いてたのは、生活相談員くらいでした。一人でも何か感じてもらえたらいいんですが。

 

我々、介護従事者が目指すところは「個別ケア」です。現実には難しいことも多いですが、考え方は必要です。やろうと思わなければ何も出来ません。

どんなことでも一律に良い悪いという概念は捨てましょう。色んな可能性を考えながら、利用者の望む生活の実現を目指していきたいものです。